花の窟神社その2
祭神 伊邪那美尊(いざなみのみこと)
竹澤秀一著 伊勢神宮の謎を解く
一の章 自然の神から王権の神へより抜粋
『古事記』を見ますと、イザナギ・イザナミの「国生み」にはじまり、いたるところ性と生殖のイメージに溢れていて、驚かされます。
イザナミには三十五柱―神を数えるには柱をもちいます―
もの神々を産みつづけますが、火の神を産んだ時、とうとう最後をむかえます。
その名をカグツチという。このカグツチをうんだとき、母のイザナミは陰(ホト)を火に焼かれて、やまいに臥した。
結局、イザナミはこれが原因で死んでしまいます。ホトとは女陰のこと。今日の感覚でいえば「からだを焼かれて」といえばすむこと。なにもそこまでいわなくても、との感があります。なにしろ朝廷が編纂した公式の文献なのですから。やはり格別の意味があったにちがいありません。
火の神カグツチを産んだ時、ホトを焼かれたイザナミが葬られたと伝えられる花の窟。その窪みはイザナミのホトか。
火の神カグツチを産んだ母イザナミがホトを焼かれて死んだという話は、火山活動が下敷きになっているとみられます。火口こそ、母なる大地の女陰(=火処ホト)であり、そこから火の神が生まれ出たわけです。この世の現象のすべてを生命的にとらえ、エロス的観点から読み解く発想がはたらいているのです。後略
北山修+橋本雅之著 日本人の〈原罪〉
第三章 国生み、神生みとイザナミの死より抜粋
【現代語訳】
イザナミは、最後に火の神、ヒノヤギハヤヲの神を産みました。
この神の別名は、ヒノカガビコの神、ヒノカグツチの神と言います。
その時、イザナミは生まれてきた火の神のために、陰部に大火傷を負い病の床に臥せったのです。(重体の病床で)嘔吐からカナヤマビコの神とカナヤマビメの神が成り、排泄物の大便からはハニヤスビコの神とハニヤスビメの神が成り、小便からはミツハノメの神とワクムスヒの神ができあがりました。この神の子神をトヨウケビメの神と言います。さてイザナミは火の神を産んだことが原因で(激しい苦痛と垂れ流しのなかで力尽き、)ついに最後を迎えたのです。(イザナミの死を悲しむ)イザナギは、
「愛しい我が妻よ、お前の命を一人の子どもと代えようとは思わなかった」
と言って、( 悲しみにくれ、)妻の枕元や足元を這い回って大声で泣いたときに、その涙にできあがった神の名は、香山の畝尾の木本に鎮座するナキサワメの神と言います。さて、亡くなったイザナミは出雲の国と伯耆の国の境にある比婆山に葬られたのです。
(怒りが収まらない)イザナギは、腰に帯びた長い剣を抜いて、我が子カグツチの首を刎ねたのです。そうして、その刀の切っ先についた血が神聖な石の群れにほとばしりついてできあがった神の名は、イワサクの神と言いました。つぎに、ネサクの神、そのつぎにイワツツノヲの神。つぎに、刀の鍔についた血も、神聖な石の群れにほとばしりついてできあがった神の名は、ミカハヤヒの神と言いました。つぎに、ヒハヤヒの神、そのつぎにタケミカヅチノヲの神、またの名はタケフツの神、そのまたの名はトヨフツの神。つぎに、刀の柄に集まった血が、指の間から漏れ出てできあがった神の名は、クラオカミの神といいました。つぎにクラミツハの神ができあがりました。
祭神 軻遇突智尊(かぐつちのみこと)
イザナミの死に激怒したイザナギにより殺されたカグツチもここに祀られている。
【案内看板より】
花の窟神社は「日本書紀」に書かれている日本最古の神社であり「日本神話のルーツ」である。
人々は様々な願いを聞いてくれた伊弉冉尊の死を悲しみ、感謝の気持ちを込めて祭礼を行うようになった。毎年
・二月二日・・・種まきの時期
・十月二日・・・刈り入れの時期
花の窟神社お綱かけ神事
7本の縄を束ねる理由
・伊邪那美命(イザナミノミコト)の子である7つの自然神を表している
7つの自然神
・風の神・・・級長戸辺命(しなとべのみこと)
・海の神・・・少童命(わたつみのみこと)
・木の神・・・句句廼馳(くくのち)
・草の神・・・草野姫(かやのひめ)
・火の神・・・軻遇突智尊(かぐつちのみこと)
・土の神・・・埴安神(はにやすのかみ)
・水の神・・・罔象女(みつはのめ)
7つの自然神の使いとして、お祓いを受けた白装束姿の7人が御神体の頂上(高さ45m)に登り縄(約170m)を引っ張り上げ、縛って固定する。
左回り(反時計回り)で七回半回り、残りを右回りで巻き付けて固定する。
・天まで届く柱を立て、立派な宮殿を造り、国生みのためその柱を回った。
左回りに七回半回ったが生まれなかった。
その後、右回りすると国が生まれた。
そのためと考えられる。
三神を意味する縄(昔は、朝廷より献上された錦の旗)
三神とは、宇宙を基本構成する伊邪那美命(イザナミノミコト)の子
・太陽の神・・・天照大神(あまてらすおおみかみ)
・月の神・・・月読尊(つきよみのみこと)
・暗黒の神・・・素戔嗚尊(すさのおのみこと)
そろそろ那智勝浦のホテルに向けて引き返すことにする。
伊勢神宮の謎を解く アマテラスと天皇の「発明」 (ちくま新書)
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