徘徊する魂   Traveling Alone ! 

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比和自然科学博物館

今月9日、鳥取方面から帰宅途中に、台風9号通過直後の比和自然博物館に立ち寄るf:id:YBR125K:20210814143609j:plain

庄原市比和自治振興センターの一画にある比和自然科学博物館f:id:YBR125K:20210814143739j:plain

入館料¥310也を支払い展示スペースに入るf:id:YBR125K:20210814143951j:plain

民俗資料はもとより、多岐にわたる動植物標本の数々に目を奪われるf:id:YBR125K:20210814144611j:plain

中国山地の自然と題された小動物と鳥類の剥製f:id:YBR125K:20210814144827j:plain

イタチやキツネや狸f:id:YBR125K:20210814145040j:plain

モグラ類だけでもものすごい数が展示されているf:id:YBR125K:20210814145408j:plain

中でも興味を惹かれたのがこれf:id:YBR125K:20210814145640j:plain

【標本の解説文より】

雌雄モザイク(Gynandromorph)とは、生物においてひとつの個体の中に雄の特徴と雌の特徴を持つ部分が、明らかな境界を持って混在していることをいい、その現象を雌雄モザイク現象といいます。雌雄モザイク現象を持つ個体を「雌雄型」といい、生物の世界では稀に出現しますが、昆虫は身近な存在なので比較的よく発見されます。

 雌雄モザイク現象の原因は、1個の卵子に2個の精子が入り受精したとするなど諸説があり、まだよく分かっていません


全ての雌雄型が体の中央線から左右で違う訳ではありませんが、台湾産のムモンウスキチョウの翅(はね)の模様を見ると、左半分が雄で右半分が雌になっています。
 チョウの場合、翅の模様が雌雄であまり変わらないものより、明らかに異なるものの方が、雌雄型はよく発見されます。

ミヤマクワガタ(雌雄型)の標本を見ると、前足や頭部の形状が右半分は雄の形をしており、左半分は雌の形をしています。クワガタムシの仲間ではきわめて稀に雌雄型が発見されていますが、この標本は1984年に尾道市で捕獲されたものでミヤマクワガタとして全国で8番目の発見例です。f:id:YBR125K:20210814145901j:plain

次がこれf:id:YBR125K:20210814150006j:plain

【標本の解説文より】

チベットで古くに、この菌が冬は虫の姿で過ごし、夏になれば草のようになると考えたことから、「冬虫夏草」と名づけられました。チベット文字の呼称を漢語に直訳したのが「冬虫夏草」です。

世界での種数は千を超えています。

冬虫夏草」は、本当は冬虫夏草菌(オフィオコルジケプス属の菌)が昆虫やその幼虫に寄生し、それを養分にして成長しキノコになったもので、「子のう菌類」の一種です。

カメムシタケはカメムシの成虫に、セミタケはセミの幼虫に、サナギタケは蛾の蛹(さなぎ)に寄生したもので、中国などでは古くから、セミタケなどが薬用や料理の素材として利用されてきました。

 

比婆山連峰で発見されたラトロビウム ヒバゴンについての解説パネルf:id:YBR125K:20210814163028j:plain

【案内パネルの解説文より】

ラトロビウムヒバゴン -ハネカクシの新種発見-

学名:ラトロビウムヒバゴン(Lathrobium hibagon)
和名:ヒバヤマヒメコバネナガハネカクシ(ハネカクシ科)

ハネカクシとは -はねを隠して腹隠さず-

 ハネカクシは、カブトムシやクワガタムシなどと同じ、コウチュウ目に含まれる昆虫の一群である。コウチュウ目の仲間は、背面から見ると硬化した前翅が腹部全体を覆っている。ところが、ハネカクシでは前翅が短くなり、腹部が露出する。短い前翅の下には、飛ぶための機能的な後翅を折りたたんで「隠して」おり、このことが名前の由来になっている。日本からは2,000種超が知られているが、まだまだ多くの新種が発見されると考えられている。しかしながら、体が小さい種が多く、体長1cmを超えることはまれなことや、森林の落ち葉の中などの人目につきにくい場所に暮らしているため、研究は立ち遅れている。

■新種発見の経緯 ~比婆山連峰甲虫調査にて~

 比婆山連峰甲虫調査に参加した当博物館研究員の千田喜博が、ハネカクシの同定を担当した。この際に、ナガハネカクシ属(学名:Lathrobium)のヒメコバネナガハネカクシ種群(brachypterum group)に含まれる種が採集されていることが分かった。このグループの種は森林の落ち葉の下に生息しており、なおかつ地域ごとに違う種類が分布している傾向がある種である。中国地方では隠岐から1種が見つかっていたが、本土側からはこれまで知られていなかった。
 比婆山連峰甲虫調査で得られた標本を詳しく調べ、近隣地域で発見されている種を中心に体の各部の比較検討を行った結果、これまで知られているいずれの種とも異なる特徴を持つ種であった。本新種は香川県から知られる種に最もよく似ているが、交尾器をはじめとした雄の性徴が明確に異なることで区別でき、これまで報告されていない種であると結論付け、日本昆虫分類学会の英文誌にて新種として発表した。

■名前の由来 ~ヒバゴンの名に込めた思い~

 生物の世界には、「国際動物命名規約」という決まりがある。動物の名を決める国際的な約束事で、あらゆる「動物」はこの規約に従って学名を与えられる。そして、与えられた学名は永久に残る。今回発見された新種には、和名としてヒバヤマヒメコバネナガハネカクシ、学名としてLathrobium hibagon(ラトロビウム ヒバゴン)という名が与えられた。hibagonとは、もちろんあのヒバゴン!のことである。ヒバゴンの目撃のあった比婆山連峰は多様な生物の生息地でもあり、その中には本種のような未知の生物も含まれている。この名には、ヒバゴンが暮らしていけるような当地の豊かな自然が末永く守られてほしいという願いが込められている。

■新種を発見するということ
 「新種を発見した」というと、「すごい!」といわれることがある。それは、おそらく多くの人は新種がなかなか見つからないと思っているからであろう。しかし、新種の発見は実はさほど珍しいものではない。日本の昆虫に限っても、年に100~200種程度は新種が見つかっているといわれている。このペースは年々落ちるどころか上昇しており、ほかの多くの生物に関しても同様な状況にある。つまり、この地球上に存在する生物は、我々の想像を遥かに超え、圧倒的に多様ということがいえる。
 この地球上の多様な生物を、未だに人類は把握できていない。その一方で、開発を始めとした人類の活動の影響で、多くの生物が絶滅の危機に瀕している。その中には、人類が存在を知ることなく滅びている種もいると考えられる。新種を発見するということは、人類の知識の体系に新たな生物種を加え、多様性の解明に一歩近づくということといえる。 その多様性を最前線で目の当たりにし、未知の生物に名を与え、秩序立てて整理し、人類の知に組み入れる学問を、分類学という。f:id:YBR125K:20210814163201j:plain